驚いて振り返ると、階段の上にあった姿。
逆光で暗くて、顔が見えない。
でも、わかる―――…
「…ゼン?」
あれは、ゼンだ。
「………」
その影は無言のまま、すっと闇に溶けた。
私は急いで階段を駆け上がると、きょろきょろと辺りを見渡す。
「…あれ?ゼン?」
さっきまで、確かにあったはずのゼンの姿が、どこにもない。
「………何」
「ひゃあっ!?」
いきなり後ろから声が聞こえて、私は驚いて振り返った。
…そこには。
「ゼ…ゼン!何で私の後ろに!?」
「…何でって。俺はすぐ横にずれただけだけど」
「…え」
「そしたら、あんたが俺より前に出てきょろきょろしてたんじゃん」
えーと、つまり。
私が勢い余って駆け上ったとき、ゼンは私の死角にいたってこと?


