父さんはひどい。


この窓のある倉庫に閉じ込めたって、嫌でも外の光景が見えてしまう。


「おいゼン!? 聞いてんのか!?」


レキの噛みつくような怒鳴り声でさえも、今の俺を動かせはしなかった。


手も、足も。

情けないくらいに、何も動かすことができない。


一つ扉を挟んだ向こう側で、仲間が一人、また一人と倒れていく姿を、ただ見ているだけ。



もう俺は立派な海賊だと、勝手に思っていた。



けど、その考えが間違っていると、はっきりと思い知らされたんだ。


こんなにも…震えが止まらない。



今までだって、数多くの戦いの場面に遭遇してきた。


けど、今の戦いは違う。



―――相手が、強すぎた。



大きな音と共に、扉が壊れた。


息を弾ませたその姿を見て、レキが壊したんだと理解した。


「ゼン…俺は、戦う」


レキは振り返らずに、小さく、けどはっきりと聞こえる声でそう呟いた。