何で、と訊こうとした俺は、父さんの真剣な眼差しを見て口をつぐんだ。


「頼む、ゼン。この問題は、お前にはまだ早い」


…一年が、経った。


剣術も武術も、人一倍努力したんだ。


なのに父さんは、俺を一人の"海賊"として見てくれたことは一度もない。


いつだって、俺は父さんの"息子"だった。


「…わかった」


だから俺は、頷くしかない。


「よし、いい子だ」


例えその裏に、違う感情があったとしても。





辺りはすっかりと闇に包まれ、微かに虫の音が響く。


「………」


俺は大人しく船番…というわけにもいかず。


人身売買が行われているという場所へ、繋がる入口へ来ていた。



ただ言うことを聞くだけの人間になったら、俺は海賊になんかなれない。


この先へ足を踏み出すことは、これからにきっと影響を与えてくれるはず。