―――…


サンが一人で旅立ってから、早くも一年が過ぎた。


サンからの連絡はない。


でも元気でやっているだろうと、父さんと母さんは笑っていた。



航海も順調に進んでいたある日、Queen号はある街に辿り着いた。


そこで俺たちは―――闇を、見る。



「…人身売買?」


父さんが眉をひそめ、不快な声を出すと、船員の一人が頷いた。


「はい。この奥で、夜な夜な人身売買が行われている、という噂を聞いたことがあります」


全員が足を止めると、指差された方向を見る。


どことなく、暗さが漂うその道に、俺は胸がざわつくのを感じた。


「聞き捨てならないな。…よし、夜になったら行ってみよう」


父さんの提案に、誰一人嫌な顔はしなかった。


「…ゼン」


不意に、父さんが振り返った。


俺は眉をひそめ、次の言葉を待つ。


「お前は船で留守番だ。母さんと一緒にいろ」


「な…」