見捨てられたような、そんな感覚になった。


そんなわけじゃないことなんて、わかってる。


わかってるのに…サンは特別だ、と言われたような気がして。


「………っ、わかった」


本当は何もわかってなんかなかった。


ただ、ここで反抗したら、自分がより惨めになると感じた。


「…ゼン。父さんの言う通りだ」


サンはそう言うと、また俺の頭をポンと叩いた。


その叩き方は、さっきよりも優しかった。


「お前は、まだまだ伸びるよ。自分の可能性をもっと広げてから、海に出るんだ」


赤い髪が、さらさらと揺れる。


サンはいつも、俺より一歩上をいくんだ。



「…そうしたら、海の上で逢おう。いつか、必ず」


この時のサンの笑顔を、俺は一生忘れないと思った。


闇を一瞬にして照らすほどの、眩しい笑顔を。



そうしてサンは、一人旅立った。


このあとサンが歩む人生なんて、俺が知るはずもなかったんだ…。





―――闇を照らすには、サンは眩しすぎた。