サンが、ここでお別れ?


それがどういう意味なのかわからずにいる俺の耳に、再び父さんの声が届いた。


「サンは、今日から一人前の海賊になるんだ。この船を降りることになる」


しん、と静まり返ったのはほんの一瞬で。


すぐに歓喜の声が船上で木霊した。


「サン!おめでとう!」

「お前がいなくなるのは寂しいが…頑張れよ!」

「お前ならきっと大丈夫だ!!」


騒がしい程に盛り上がる中でただ一人、俺だけがその場に立ち尽くしていた。


頭の中が、うまく作動しない。



「―――父さん!!」



気づけば俺は、大声を上げていた。


「…ゼン?どうした?」


不思議そうに、みんなが俺の顔を見た。


サンが、一人前の海賊になる。


そんなの…


「…サンだけ、ずるい。俺も一人前の海賊になりたいんだ、父さん」


俺の訴えに、父さんは困ったように笑う。


「…ゼン。お前はまだ、先を急いじゃダメだ」