「ご両親を奪われて。それに、大切な人まで…」


「…大切な人?」


私が反応を示すと、ニーナは悲しそうに笑った。


「そうよ。あたしの…」


「ニーナ!!」


ニーナの言葉の続きは、レキの声でかき消された。


「それは…お前が言うことじゃねぇだろ」


見ると、レキは唇を噛みしめていた。


そんなレキに、ニーナはムッとしたように顔をしかめる。


「…何?別に詳しく話すわけじゃないんだから、いいじゃない」


「よくねぇよ」


「レキ。あんたはゼンのためにそう言ってるんじゃないわ。…自分のために言ってるのよ」


ニーナの鋭い言葉に、レキはぴくりと眉を上げると、顔を逸らした。


その様子を見て、ニーナは嘲笑うように吐き捨てた。


「ほーら、情けない」


「…何だと?」


「そうやって現実から逃げようとするから、いつまでたっても前に進めないのよ」


ニーナに冷たい視線を向けられ、レキの体が一瞬強張る。