「だいたいのルートは、こう」
綺麗な指先が、地図上に大きな円を描く。
「航海を始めて三年経つけど、まだ全然一周なんて出来てないのよね」
「…あれ、この印は?」
所々に、小さな丸印やバツ印が書かれているのを見つけた私は、ニーナに訊ねた。
「それはね、地図上にない新たな大陸や村を発見したり、逆に地図上にはあるのになくなっていたりしたら記してるの」
「へぇー…」
感心している私に、ニーナは笑いかけてくれた。
「自分の目で、肌でその場所を感じたとき、そこには自分だけの地図が出来るわ」
開いていた地図を丸めると、ニーナは続けた。
「紙に描かれた地図じゃない。自分だけの、心に描く地図」
そのときのニーナの表情は、すごく輝いていて。
…羨ましい、って思った。


