何も感じないような瞳で、俺をただじっと見ている。


零れ落ちる涙だけが、ララの心を表していた。



そっと、掴んでいたララの腕を引き寄せた。


その弾みで、ララの細い体が俺の胸におさまる。


疲れきり、打ちつける雨で冷えきったその体を包み込むように、俺は腕をまわした。


「…ララ、落ち着くんだ」


語りかけるように、ララの耳元で口を開く。



フォーグでの豪雨。

闇市場での雷。


…そして、今回の嵐。


これは全て、偶然に起こったものなんかじゃない。



ララを抱く腕に、力を込める。


微かに、震えが伝わった。



「…あんたは、ひとりじゃない」



そう呟くと、荒れていた海が、徐々に落ち着きを取り戻してきた。


腕の力を緩めると、ララはゆっくりと顔を上げた。


「…ゼン…?」


赤紫に戻ったその瞳を見て、俺は確信した。





―――"もしかしたら、ララは…人魚の神の子なんじゃないのか?"