「…護らなきゃ…」


聞き取れるかわからない程の小さい声で、ララが呟く。


「…みんなを…護らなきゃ…」


ララは俺から逃れ、またふらつきながら戦場へ踏み出そうとする。


「…何する気」


その腕を掴み、引き止める俺を、ララは振り返りもしない。


…何かが、おかしい。



豪雨は止むことなく、むしろ勢いを増していく。


穏やかだった海も一変し、荒れた波が船を揺らし続けていた。


ふと、アルザが言っていたことが頭をよぎる。



―――"もしかしたら、ララは…"



その時、振り返ったララの赤紫の瞳は。


どこまでも深い海のような、紺碧の色に変わっていた。


「!!」


ごおっ、と暴風がうねりをあげ、通り過ぎる。


冷たい雨に加勢するかのように、稲妻が雲の隙間から走った。



これは、まさか―――…


「…ララ」


相変わらず、ララの反応はない。