・ゼンside・
「!?」
突然、船が大きく揺れたことで、俺はバランスを失いかける。
その場にいた誰もが、何事かと一瞬動きを止めた。
「…空が…」
先ほどまで澄み渡っていた青空が、急に表情を変えた。
雲に覆われた灰色の空からは、ときどき雷が喉を鳴らす音が聞こえる。
「!」
一歩下がった俺の目の前を、剣の切っ先が切り裂く。
その刃で俺を斬れなかったことに苛立ったのか、相手は舌打ちをした。
「…ったく、戦いの最中によそ見してんじゃねぇよ」
「………」
俺は目を細めて、敵を見据えた。
…こいつが言っていた、赤髪の男。
俺が長年追い求めていた、あの男かもしれない。
こんなチャンスに巡り会えるなんて、思ってもいなかった。
…決して、無駄になんかしたくない。
どうにか名前だけでも聞き出さないと。


