「かくいうあたしも、ね」
はは、と乾いた笑い声を漏らすニーナに、私は何も言えなかった。
ニーナはカップを口元に運ぶと、
「…まぁ、詳しいことはゼンから直接聞いた方がいいわよ」
と言ってから一口飲んだ。
「…ニーナ、私、"ルナ"の仕事が知りたいな」
あからさまな話題の逸らし方。
自分にバカって言いたくなる。
それでもニーナは、笑ってくれた。
「本当に優しいのね、ララ。…いいわよ?」
私、優しくなんかないよ?
そう言いたかったけど、やめておいた。
「"ルナ"は、世界各地を回ってるんだよね?」
私の質問に、ニーナは軽く頷いた。
「そうよ。進む先に陸地が見えれば、そこに錨を降ろす。そこが用のない場所だったとしてもね」
ニーナは立ち上がると、戸棚から地図を取り出した。


