紺碧の地図


「…その赤髪は、名乗ったのか」


「は?」


ゼンの問いに、船長は何でそんなことを訊くのかわからないような顔をした。


「名乗った…かもなぁ。てか何でお前にそんなこと言わなきゃなんねぇんだよ」


船長は腰の剣をスッと抜くと、しっかりと構えた。


「どうせお前らは、ここでオレらに消されるんだからな」


その言葉が合図かのように、敵が一斉に剣を構えた。


ゼンは苦い顔をしながらも、ため息をついた。


「それは…ないな」


ゼンがそう呟いた次の瞬間、空気が揺れた。


いくつもの剣がぶつかり合い、不協和音を奏でる。


この船の上はもう、戦場と化していた。


「………」


その光景から、目を逸らすことができない。


鋭い刃が宙を舞い、赤い飛沫が床を染める。



人が傷つけ、傷つけられる姿を見るのは、未だに慣れない。


止まらない震えを抑えるように、私は自分の体を抱きしめた。