場の空気から伝わってくるのは、みんなの緊張。


そして…これから起こることへの、不安。


「ララ」


肩を優しく叩かれ、私は少し驚きながらも振り向く。


そこには、複雑な表情をしたニーナがいた。


「…もう、自分が犠牲になろうとか考えないでよ」


「ニーナ…」


私と同じように、ニーナもイズラたちのことを思い出しているみたいだった。


願いが込められたその言葉に、私は小さく頷く。


そして、再び視線を戻した。


「…何の用だ」


ゼンは毅然な態度で、相手に問い掛ける。


船長らしき人物が、一本前に出て口を開いた。


「何の用、か。もちろん用はあるさ」


一つに結わえた茶色の長髪を靡かせながら、その人物は勿体ぶるように話し出した。


「この船の有り金と食糧。全ていただこうか」


遠くに見えるゼンの肩が、ぴくりと動いた。