ゼンの行動は、素早かった。


「各自、戦闘準備。俺が扉を開けたら持ち場につけ。…合図するまで、動かないこと」


常に腰にある鞘から剣を抜き、焦る様子もなく船員に指示をする。


対して、みんなの動きも素早く、目つきが変わった。



…こういうときに、思い知らされる。


私とみんなの、経験の違い。


みんなが静かに戦闘準備を整えている間、私はただ黙って立っていることしかできなかった。


「…いいか、開けるぞ」


扉に手をかけたゼンが、みんなに一声かける。


そして一拍置いてから―――勢いよく扉を開けた。


「………!!」


それは、どこかで見た光景だった。


あれは…そう、イズラに初めて会ったとき。


大勢の"ラー"と思われる海賊たちが、私たちの船に乗り込んでいた。



薄ら笑いを浮かべている海賊たちを見て、私はごくりと喉を鳴らす。


この光景から、いい予感なんかまるで感じられない。