紺碧の地図


「…ニーナ?」


心配した私がそう訊くと、ニーナはすぐに微笑んだ。


…ぎこちなさが、残っていたけど。


「…詳しくは、知らないのよ。この船、ゼンのお父さまの船だから」


「えっ、そうなの?」


「ええ。名付け親もゼンのお父さまだしね」


ゼンのお父さん…。

み、見てみたい。


ごくりと喉を鳴らすと、私の考えがわかったかのように、ニーナは苦笑した。


「会えないわよ?…亡くなったもの」


「………え」


あまりの衝撃に、私は手に持っていたカップを落としそうになった。


「ゼンは、お母さまも亡くしてるわ。…それだけじゃないの」


ニーナの悲しげな表情が、ゆっくりと私に向けられる。



「…この船にいる仲間はみんな、身寄りのない人たちなの」



淡々としたその口調は、静かなこの部屋に、より悲しく響いた。