その優しい瞳に、表情に。


今まで必死に隠していた感情が、溢れ出す。


「―――ゼ、ン」


「…何」


「私、その…ト、トイレ!」


我ながら、下手な言い訳しか思い浮かばなかった。


けど。


「…行ってくれば」


…やめて、ゼン。

そんなに優しく、笑わないで。


「うん、行ってくる」


ぎこちない笑いを返して、私はゼンに背を向け、走り出した。


ゼンから遠ざかるにつれて、徐々に込み上がってくるのは。



ゼンへの気持ちと―――涙。



…気づかない、ふりをした。


心のどこかに芽生えた感情に。


違うって、そんなんじゃないって思い続けて。


その一歩を躊躇って…踏み出せずにいた。



けど、もう隠しきれないほどになっていたんだ。


…だって、涙が止まらない。



「ゼン…」



ゼンに触れられた髪が、熱を帯びる。





―――――私、ゼンが好きなんだ。