「何でそんな挙動不審なの」


「そ、そんなことないよっ」


肩を揺らして笑うゼンを、私は恥ずかしくてまともに見れなかった。


「…で?もう動いても平気なわけ」


「え?あ、うん」


「…全く、無茶するからだ」


「む!無茶じゃ、ないもん…」


「ほら、語尾が小さくなる」


「う…」


また、笑われた。


けど…ゼンは、心配してくれてたんだよね。


「…ありがとう、ゼン。また助けられちゃったね」


へらっと笑うと、ゼンは全くだ、というようにため息をついた。


でもその口角は微かに持ち上がっていて、それが私には嬉しかった。


「…けど、」


スッと伸びてきた腕が、私の髪に触れた。


あまりに突然で、でもあまりに自然なその行動に、私は身動きが取れなかった。


ゼンの指が、ゆっくりと…私の髪をさらっていく。


「けど…無事でよかった」