今、目の前にいるのは…王宮の人間じゃ、ない。


「…っ、誰だ貴様らっ!」


アルザが涙声でそう叫ぶと、アランの血に染まった剣を拭う人物がこっちを見た。


鷹のような鋭い視線が向けられ、体がすくむ。


「…あー。どこかで見た顔だと思ったら…この国の王女様でしたか」


何が可笑しいのか、その人物はくっくっと笑った。


そして視線は、アルザからシーザに向けられた。


「おいシーザ…随分と可愛らしいお友達だな?」


「…お頭っ…」


悔しそうに、シーザがそう呟く。


"お頭"ってことは、この人たちは…盗賊?



突然、大きな笑い声が響いた。


「笑わせんなよ、シーザ。お前らは抜けたんだ。俺を頭と呼ぶ資格はねぇさ」


そうだそうだ、と野次が上がり、シーザの顔が更に険しくなる。


「…そうだ。オレたちは盗賊をやめたと、あんたに言ったはずだ」


シーザが剣を抜き、真っ直ぐに構える。