―――あのとき。
『…俺は、アルザ様の教育係兼護衛です』
そう言ったロイの瞳は、優しさに溢れていた。
その優しい瞳で、アルザを見てたの。
仕方なくアルザのもとにいるなんて風には、私には見えなかった。
それに…王宮に入る前、ロイが落として私が拾ったものは、ペンダントだった。
返し忘れて部屋に置いたままだけど…ペンダントの写真には、笑顔で写るまだ幼いアルザとロイの姿があった。
…なんだろう。
アルザが、ロイが、お互いを思い合ってるようなのに、どこか噛み合わない。
肝心なところが、伝えきれてないんだ。
「貴様に見られたのは誤算だったな。…いいか、貴様にも協力してもらうからな」
「………っ、」
無理やりに明るく振る舞うアルザに、私は言いたかった。
ロイの気持ちも、聞いてあげたらいいんじゃないかな、って。
お互い、どこかすれ違ってるんじゃないかな、って。
…でも、言えなかった。
ふと、ゼンの顔が浮かんで。
私…また他人事に首突っ込もうとしてるのかなって思ったら、言葉が出なくなった。


