「それなら、ロイのためにはならないよね?」
これがロイのために仕組まれた誘拐なら、アルザはロイに助けてもらうことを望んでるはず。
ゼンの方が実力が上なら、仮にもアルザの護衛役を授かってるんだし…
きっと、ゼンが先にアルザを助けてしまう。
けどアルザは、私の疑問の声に、首を横に振った。
「…いや。それがいいんだ」
「え?」
「ロイよりも、ゼンが先にわたしを見つけ、助ける。…それが、わたしが望む展開だ」
どうして…。
口には出さなかったけど、私の気持ちはやっぱりバレバレだったらしくて。
アルザは苦笑すると、その小さな唇を開いた。
「自由になってほしいんだ」
その表情は、どこか悲しげに歪んでいて。
見ているこっちが、ぎゅっと心臓を掴まれたような気持ちになった。
「ロイは…家系に縛られて、きっとわたしのそばにいる」
「家系に…」


