「これは、わたしが二人に頼んだことだ。誘拐しろ、と」
そこでやっと、私にはアルザの言ってることがわかった。
―――狂言誘拐。
これは、アルザの計画的な誘拐なんだ。
でも…
「何のために?」
私の素直な疑問に、アルザは視線を逸らし、冷たいコンクリートの床を見つめた。
「…ロイの、ためだ」
「え…?」
アルザの口からロイの話題が出たことで、私は目を丸くした。
そんな私を、アルザは突然キッと睨んでくる。
「いいか」
「は、はい」
年下の少女とは思えない気迫で圧力をかけられ、私は思わず姿勢を正す。
再び、アルザは言葉を続けた。
「貴様がわたしを目撃した辺りに、わたしの血痕を残しておいた」
「血…」
それが、右腕の傷なんだ。


