私の視線に気づいたのか、ゼンがふとこっちを向いた。


出逢った頃と変わらない…強い力を宿したような茶色の瞳。


吸い込まれてしまうような感覚がして、どくんと心臓が脈打った。


「………」


ゼンは何を言うわけでもなく、視線を船の先端に戻した。


けどその口元は微かに笑っていて、私も思わず口元が緩んだ。



深く考えたって仕方ないよね。


ゼンはゼンだもん。


私の目に映る姿は、決して偽りのものなんかじゃない。


全てを知ろうなんて、思わなくてもいいんだ。


「ちょっとララ!! ロイ励ますの手伝ってよー!!」


「えっ?あ、ごめん!」


ニーナの助けを呼ぶ声で、私は慌ててロイのもとへ駆け寄った。



…このとき私は、送られている小さな視線に気づかなかった。