ゆっくりと見上げると、そこには不気味に笑った誰かがいた。
―――私の仲間じゃない。
そう思うのと同時に、既に赤く染められた刃が振り下ろされた。
逃げなきゃ、そう頭ではわかっていたのに。
両手がまだ縛られたままで、立ち上がれなかった。
ロジー…ごめんね…
「ぐあっ」
ぎゅっと目を瞑った私の耳に届いたのは、くぐもった呻き声。
次いで、
「何やってんだお前!大丈夫か!?」
というイズラの大声が聞こえて、私は目を開けた。
イズラの足元には、私に剣を振り下ろそうとした人が倒れていた。
「…イズラ…その人っ…」
「こいつは、俺の仲間じゃねぇ。この騒ぎに便乗してきた奴らが、他にもいる」
唾を吐き捨てながら、イズラは鋭い視線を周囲に走らせた。
「俺の怒鳴り声が、届きゃしねぇ…くそっ」
だん、とイズラが地面を踏み鳴らした。
その振動が、私の体を伝わってくる。


