「…ゼン、ニーナ…」
私より先に行ったはずの二人の姿は、この人混みに紛れて見当たらない。
「…みんな、やめて…!!」
声を振り絞って叫んでも、周りの騒音にかき消されてしまう。
私の声は、誰にも届かない。
視界がぼやけそうになるのを、唇を噛みしめて堪える。
あきらめちゃ、ダメ。
私は意を決し、戦場と化した闇市場へと飛び込んだ。
「みんなっ…、みんな、お願いやめて!!」
必死にそう呼びかけても、誰も私に気づいてくれない。
みんな一体、どうしちゃったの。
そのとき、私は何かに躓いて、前のめりに倒れた。
「………っ、」
私が躓いたのは、人。
微かに息はあったけど、血だらけの姿で倒れていた。
「―――いやぁ!!」
瞬時に蘇る、あの日の記憶。
どれだけ頭を振っても、その記憶を追い払うことができない。
そんな私の目の前に、人の気配があった。


