そのときだった。
大きな音を立て、闇市場の壁が崩れ去った。
闇市場の会場は一瞬静まり、すぐに何事かとざわめきを取り戻す。
崩れ去った壁の向こうに、人影が見えた。
舞い散る砂埃のせいで、その姿がはっきりとはわからない。
「…あの馬鹿…」
隣で、ゼンが舌打ちしたのを聞いて、私はそれが誰なのかわかった。
あれは―――…
「俺の仲間を返せ!」
あれは、レキだ。
レキだけじゃない、他のみんなもいる。
レキたちは会場に乗り込み、観客席やら何やらを、壊し始めた。
観客は悲鳴を上げ、互いに押し合いながら逃げて行く。
「…おい何だあいつら、お前らの仲間か!?」
イズラの焦りを含んだ声音に、呆然としていた私は我に返る。
「あ…うん、そう」
「参ったな…やべぇぞ」
…やばい?
その単語に、どくん、と心臓が跳ねる。


