「…っ、あるわけ、ないでしょ」
私が声を振り絞って答えると、イズラは「やっぱな」と呟いた。
「俺はある。ガキん時で、初めて殺したのは…親父だった」
『エントリー№2!イーザ!』
会場の歓声が、遥か遠くに聞こえた。
イズラの言葉が、胸の奥深くに響いた。
「…えっ…?」
やっとの思いでそう言うと、イズラは苦笑した。
「笑っちゃうよな。親父は、役立たずの俺を売ろうとしたんだぜ?実の息子を、だ」
乾いた笑い声が、虚しく響く。
イズラはゆっくりと、自分の手のひらに視線を落とした。
「…今でも覚えてる。剣で親父を貫いた時の、あの感触を」
微かに震える手のひらを、イズラはぐっと握りしめた。
「忘れられないんだ。何度も何度も夢に見た。…ララ、俺に後悔してないのかって訊いたよな」
イズラが顔を上げ、私を見た。
私は唇を固く結んだまま、頷いた。


