眉をひそめたイズラに、私は言う。
「…知ってるから。誰かを失う悲しみと…独りぼっちになる悲しみを、知ってるから」
広い広いこの世界。
そこに、独り取り残されたような悲しみ。
胸が張り裂けそうになる悲しみを―――私は、知ってる。
「そんな悲しみを感じる人を…少しでも減らしたいの」
理由なんて、それしかない。
誰をも納得させられるような…立派な理由なんて、ない。
それでも、私は―――…
「バッカじゃねぇの」
吐き捨てるようにイズラが言った言葉に、ニーナが怒りの声を上げた。
私も、全身がカッと熱くなるのを感じた。
イズラの目の前まで早足で近づき、藍色の瞳をキッと見据える。
「…お前はさ」
「………」
悔しさに唇を噛みしめていた私に、イズラが口を開いた。
「お前は、誰かを殺したことあるのか?」
藍色の瞳が、揺れた。


