―――そのとき。
『おーっと、80アクト出ました!それ以上の方は?いませんね?…はい、決定です!』
司会者の嬉しそうな声が響き、パラパラと拍手が鳴った。
慌ててガラスの向こうに目を向けると、嫌がる少女が、無理やりどこかへ連れて行かれるところだった。
「―――――、」
声が、出ない。
あの子は…どうなるの?
買い取られて、幸せな人生が待ってるっていえる?
涙が、頬を濡らす。
目の前で起こっている事態に、何もすることができない―――…
「お前さ、何でそんな他人の為に必死になるわけ?」
ゆっくりと振り返ると、イズラが私を見ていた。
「すっげぇ気になるんだけど。何で?」
…バカにしてるわけじゃないって、直感的にそう思った。
だから私は、震える唇を動かして、小さく呟く。
「…知ってる、から」
「は?」


