「闇市場の見物?ふざけんじゃないわよ!どうしてあたしたちがっ…」
「参考になるだろ」
ニーナの言葉を遮って、イズラが答えた。
「実際自分の番が来たときの、参考になる」
「………っ」
唇を噛みしめるニーナに、ゼンが落ち着け、という視線を送った。
そんな二人を見てから、私はガラスの向こうを眺めるイズラに視線を移した。
闇市場って…何なの?
そんな単純な疑問が、頭に浮かぶ。
私の視線に気付いたのか、イズラがふと私を見た。
イズラは何も言わず、小さく笑みを溢した。
…私には、わかった。
イズラの瞳は、笑ってなんかなかった。
急に、ガラスの向こうがパッと明るくなり、人がぞろぞろと現れた。
人々は楽しそうに笑いながら、次々に席に着く。
あっという間に、空席が埋まっていった。