最後の一人が一礼をして扉を閉めると、イズラはため息をついて近くの椅子に腰掛けた。


「はー…あと少しで始まるな」


「ここ、何なのよ」


噛みつきそうな勢いで訊ねたニーナを、イズラはちらりと見る。


「簡単に言えば、看守室だ。闇市場の監督者がここで見届ける」


「は?こんなとこで?」


「いざこざがあっても、巻き込まれたりしないからな」


イズラは苦笑すると、視線をガラスの向こうに移した。


「闇市場の見物には、絶好の場所だ」


闇市場の、見物…?


「待って、イズラ。もしかしてここで、闇市場を見るの?」


私がそう問いかけると、イズラは笑った。


「お前らはトリだから、それまで暇なんだよ。俺は特別な客だからな。この部屋貸し切るのなんて簡単だ」


「…ちょっと」


隣で、ニーナの肩が震えているのがわかった。


その隣にいるゼンも、苦い表情をしている。