「船長、こっちじゃなかったですか?」


イズラは足を止めて振り返ると、


「今回は特別、こっちだ。黙ってついてこい」


そう言って、また歩き出した。


…何が特別なのかはわからないけど、いい予感はしなかった。



狭い通路の先に、扉があった。


その扉をくぐり抜けると、控え室のような場所に出る。



ガラス張りの奥に、広い闘技場のような場所が見えた。


どうやら、観客席もあるみたいだった。



ここが…闇市場の会場?


「お前ら、抜けていいぞ」


ガラスの向こうの光景に見入っていると、イズラが言った。


その声は私たちではなく、イズラの仲間に向けられたものだった。


「え?船長は…」


「俺はここにいる。こいつらの出番は最後だからな。時間になったらいつもの場所に行く」


イズラの答えに、しぶしぶ船員たちは頷き、部屋を出て行った。