紺碧の地図


驚いたような、呆れたようなニーナの声音に、私は唇を噛みしめた。


「だ、だってっ…」


「もー。ララは感情移入しすぎだわ」


だって…そんなの嫌だよ。


伝わらない想いこそ、苦しくて、悲しいものはないのに。


「レキが忘れようとしてるなら、あたしも気づかないフリをしようって決めたの」


ニーナが、ため息と共にそう言った。


「あたしと話してる間だけは、忘れさせてあげよう、って決めたの」


…だから。


だからニーナは、わざとレキを怒らせるようなことを言うの?



言い合うことで、レキのストレスを発散させて。


その間は、その人を思い出さないようにって。



自分の想いを、ずっと胸に秘めて―――…



「…ニーナは、強いね」


ポツリと私がそう言うと、ニーナは首を横に振った。


「強くなんかないわ。あいつの心に、あたしは入れない。だから気づかれないように…逃げてるだけ」