「どうして?」
言うつもりがないって…どうして?
私の質問に、ニーナは口をつぐんだ。
そして、ゆっくりと瞳を伏せた。
「…レキには、想い人がいるから」
薄暗い部屋に響いたその言葉は、あまりにも自然に私の耳に届いて。
聞き間違いなんじゃないかと、私は耳を疑った。
「え?だって、レキ…女の子大好きなんじゃ…」
今まで一度も、そんな人がいる素振りなんて、なかったのに。
ニーナは瞼を持ち上げ、「違うわ」と呟いた。
「あんなの、自分の気持ちを隠そうと、忘れようとしてるだけよ。…忘れることなんか、できないくせに」
…そんなレキを見て、ニーナは今まで、どんな気持ちでいたんだろう。
苦しくないわけない。
悲しくないわけない。
大好きな人の心が、別の人に向けられているなんて。
「…ちょっとララ、何であんたが泣きそうな顔してんのよ」


