そう声をかけられ、私は思わず口を開いた。
「行くって、どこに?」
イズラは視線だけで私を捉えると、悪戯に笑った。
「どこかって?お前らの部屋だ。夜までそこで適当に過ごせ」
「…夜になったら?」
わかっていながらも、私はイズラに訊ねた。
イズラは考える素振りも見せず、その藍色の瞳を愉しげに細めた。
「決まってんだろ。宴の始まりだ」
◆◆◆
今度の部屋は、イズラの船とあまり変わらないように見えた。
窓もないし、薄暗い。
ひとつ違ったことと言えば、手足がつながれなかっただけ。
「…ゼン、大丈夫かな」
冷たい床に座り込み、私はニーナに訊ねた。
ニーナは私の向かい側の壁にもたれかかり、腕を組んだ。
「心配ないわよ。ゼンだもの」
根拠のない自信を、ニーナはさも当たり前かのように口にした。


