イズラが近づくと、中央の人物はニヤッと笑った。
「これはこれは…イズラ様。毎度有難うございます」
その中年の男の人は、狐のような目を細め、軽く会釈をした。
イズラが、カウンターに片腕を着き、身を乗り出す。
「粋がいいのが手に入った。受付したいんだが」
「はい、はい。では早速こちらへ記入を」
男の人は嬉しそうに、手元からするりと一枚の紙をイズラに差し出した。
イズラは胸ポケットからペンを取り出し、紙の上を走らせる。
「…ほらよ。部屋は?」
イズラから紙を受け取った男の人は、困ったように眉をひそめた。
「三人ですか…三人部屋は生憎、埋まってしまっていまして。二人部屋が二つでも?」
「構わねぇ」
「有難うございます。では、鍵はこちらです」
男の人から、イズラはお礼も言わずに鍵を受けとると、私たちのもとへ戻って来た。
「…さ、行くぞ」


