「大丈夫?ララ」
「…う、うん」
「今はまだ、人が少ない方だわ。問題は…夜よ」
ニーナの険しい表情に、私はごくりと喉を鳴らした。
確かに、建物の数のわりには人気が少なかった。
問題は…夜。
人身売買なんて怪しい商売は、闇の中で行われるんだ。
「ここだ」
イズラが声を上げ、私はうつむいていた顔をパッと上げた。
目の前には、廃墟のような…大きな建物。
そのすぐ隣に、ドーム状の建物もあった。
イズラは軋んだ音を立てる扉を開き、私たちを中へと促した。
全員が入ったのを見届けると、「こっちだ」と言って薄暗いロビーを通り抜ける。
広いロビーの中央に、カウンターがあった。
五人が間隔を開けて、カウンター越しに座っている。
それぞれの人と人との間には、小さな仕切りがあった。
「ちょっと待ってろ」
イズラは真っ直ぐに、中央の人物の前まで歩いた。


