違和感の理由がわかった。
ここの人たちは、私たちが手を縛られていることに、気づいていないんじゃない。
気づかないフリを、しているだけなんだ。
関わりたくないのか、それとも品定めの為なのかはわからないけど。
そんなの…おかしい。
私が唇を噛みしめるのと同時に、イズラが足を止めた。
「…さぁ、行きますか?楽園に」
振り向き様に浮かべた笑みは、何かを企んでいるような、不気味な笑みだった。
「楽園って言っても、俺たちにとっての、だけどな」
はは、と再び笑ってそう付け加えたあと、イズラはさらに奥へと足を踏み入れた。
活気づいていた市場は、次第に暗闇へと呑まれていく。
道幅は狭まり、辺りは不気味な建物が多くなってきた。
まだ昼間なはずなのに、周囲はどこか薄暗い。
時々聞こえてくる雄叫びや悲鳴に、私は体をびくつかせた。
そのたびに、ニーナが声をかけてくれる。


