「どうだった?船旅は」


「おかげさまで、快適よ」


つながれた鎖を順番に外しながら、イズラが問いかけた言葉に、ニーナは皮肉たっぷりに言い返した。


「そりゃ良かった」


最後にゼンの鎖を外すと、イズラは口角を持ち上げ、そう言った。


その笑顔が気にくわないのか、ニーナが思いきりしかめっ面をする。



そんなニーナの脇を素通りし、イズラはたった一つの出入り口の前で立ち止まると、振り返った。


「…いいか?またすぐ縛るが、逃げようなんてバカな真似すんじゃねぇぞ」


私たちの返事を確認しないまま、イズラは部屋を出た。


ゼンがため息をついてそのあとに続き、少し躊躇ったあと、私とニーナもゼンを追った。





船を降りると、活気づいた市場が広がっていた。


久しぶりの太陽の光に目が眩んだけど、すぐに手を縛られたから、目を細めるしかなかった。