「…なら、あんたを見捨てる理由はないよ」
途端に、ララの瞳から大量の涙が溢れ出した。
ゼンがぎょっと目を見張る。
「…な、」
「あーあ。ゼンってば、ララ泣かしたー」
「俺は何も…」
あたしが茶化すと、さらに慌てるゼンが可笑しくて、つい笑ってしまう。
ララは「うー」とか可愛らしい呻き声を上げながら、必死に涙を堪えようとしていた。
「…ララ。あんたは一人じゃないわよ」
あたしの言葉に、ララは何度も頷く。
そう、あの船にいる間は、一人なんかじゃないの。
―――"仲間"。
そんなかけがえのない存在がいる。
だから、一人で背負っちゃダメ。
「ほら、めそめそしてないで!このあとどうするか考えなくちゃ」
「…この、あとって…この船どこ行くの?」
鼻を啜りながらララが訊ねた言葉に、ゼンが答えた。
「…恐らく…」
そう、この船の行き先はきっと。
「闇市場だ」
―――地獄。


