私だけが犠牲になればすむ。
そう思っていながら、ニーナが出てきたとき…少し安心した自分がいた。
ゼンのこともそう。
ゼンが男だってバレなかったら、って。
ゼンも一緒に捕まったなら、って。
そうしたら、助かる希望が見えるのに、と心のどこかで期待した。
…瞳を見れば、ゼンにまた"大丈夫"って言ってもらえるかも、って期待した。
恥ずかしい。
どこまでも弱い自分が、恥ずかしくて、悔しくて、腹が立つ。
小さな正義を振りかざして、強がっている私は…誰よりも弱い。
こんなんじゃ、誰も救えなくて当然だよね、ゼン?
「…よし、女三人を連れてずらかるぞ、お前ら!」
イズラの大声が、私の心に虚しく響く。
誰かに引きずられるようにして、私はイズラの船に乗せられた。
背後から掛けられるみんなの声が、今の私には苦痛で仕方なかった。
それよりも。
ゼンが一度も私を見てくれないことが、きっと一番辛かった。


