今ここで、私だけが犠牲になれば。
きっと…誰も傷つかずにすむ。
私がいなくなっても、みんなは旅を続けられる。
「…そんな顔しないでよ、みんな」
私は力なく笑った。
一時でも、楽しい時間を与えてくれた、この場所。
失いたくなんかない。
「おーおー、感動なことで。じゃ、お姫さん?こっちの船に来てもらおうか」
イズラが、私の前に、傷だらけの手のひらを差し出した。
…この傷は、一体いくつの命を奪った代わりに、ついたものなんだろう。
そんなことをぼんやりと考えながら、私はその手をとろうと、右手を動かした。
―――そのとき。
「ララ!!」
凜、と響いた声。
その姿を見た私は、目を見張った。
「…ニーナ…!?」
何で隠れてくれなかったの?とか、訊く暇もなく。
しっかりとした足取りで、ニーナが近づいて来る。


