すると、不服そうな声が聞こえた。


「剣?何でまた…」


「いいから」


その人が、剣を船の上からゼンに投げようとしたとき、船に明かりが灯った。


と、同時に、夜空に響く別の声。


「何やってんのよ、レキ」


私の位置からじゃ、その声の持ち主は見えない。


でも、女の人の声みたい。


「ニーナ。いや、ゼンが…」


「ゼン?」


続いて船の上から顔を出したのは、予想通りの女の人。


長い黒髪を、頭の後ろで一つに結わいていた。


「もー、ゼン!どこ行ってたのよ!」


「…悪い、ニーナ。もう少し待って。レキ、剣」


「はいはい」


剣を受け取ったゼンは、私のいる方を振り返った。


それにつられてか、船の上の二人も私を見る。