「あんたがあまりに周囲を気にしないから、あたしが注意してやってんでしょ!」


「あーはいはい。そうですかー」


あさっての方向を見て、謝る姿勢の欠片もないレキを、ニーナは鬼のような形相で睨んだ。



…あー。


これは、危ないかも?


「は、早く船戻ろ?」


言い合いになる前にと、私は焦って二人の間に割り込んだ。


そんな私を、ニーナは一瞥すると、少し間を空けてから口を開いた。


「…そうね。みんな待ってるしね」


ニーナは身を翻し、ティナの門へと歩き出した。


その後ろ姿を見て、いつもの怒声が返って来ないことを不思議に思ったのか、レキは顔をしかめた。


「…何だぁ?あいつ」


ゼンはそんなレキの横で、あからさまなため息をつく。


「…馬鹿。行くぞ」


「へ?バカって俺?…ちょ、ゼン!?」


レキの言葉なんかお構い無しに、ゼンはスタスタとニーナを追って足を進めた。