「待っ…ゼン!」


私が追いかけようとすると、ゼンが急に振り返った。


「…いいから!そこにいて」


そう言うと、ゼンは船に向かって叫んだ。


「レキ!」


…レキ?


私が眉をひそめると、ドタバタと音がして、船の上から誰かがひょこっと顔を出した。


暗くて、顔がよく見えない。


「ゼンか!おかえりッ」


片手を上げるその人を見て、ゼンはため息をつく。


「…レキ、寝てたな?」


レキと呼ばれた人が、ぎくりと肩を震わせたのが、遠くから見てもわかった。


「…しょうがねぇじゃん。ゼンなかなか帰って来ないしー」


「開き直るな、バカ。…レキ、お前の剣貸して」


そう言って、ゼンは片手を伸ばした。