「あのっ、俺…そうです、ロシュです」
明らかに動揺しているロシュは、どうしたらいいのかわからないのか、視線を泳がせていた。
「これは…その、ティナに住みたくて…」
ふとした拍子に、ロシュと目が合った。
―――大丈夫だよ。
そういう意味を込めて、私は笑った。
そんな私を見て、ロシュは表情を和らげ、頷いた。
「俺…」
ロシュの瞳が、しっかりとレイル姫を捉える。
そして、次の言葉を口にした。
「俺は、レイル姫に逢いたかったんです」
言い終えたロシュの体が、微かに震えているのがわかった。
強く握られた拳は、逃げ出したくなる自分を、必死に押さえつけているように見えた。
…きっと、怖いんだよね。
大好きなひとが、あの時と同じように、自分に笑いかけてくれるかわからないから。
でも、そんなロシュを見て、レイル姫は―――優しく笑った。
「私も、逢いたかったです」


