ゼンはレイル姫の口を塞いだまま、静かに言った。
「…手荒な真似をして悪い。俺たちは"ルナ"だ」
「………!?」
途端に、大きく見開かれる双眸。
…ゼンってば、女の子の恰好なのに。
レイル姫は男嫌いらしいけど、大丈夫なのかな。
「…あんたに危害を加えるつもりはない。ただ…あんたに逢いたがっている人物を連れて来た」
真後ろのゼンを、必死に見ようとしていたレイル姫の瞳が、ゆっくりと動いた。
最初に、私を見て。
次に―――…
「ロシュ…さん?」
レイル姫の口は、もうゼンの手のひらに塞がれていなかった。
ロシュの名前を呼んだあと、レイル姫は呆然とロシュを見つめた。
対してロシュは、「…名前」と呟いて、顔を真っ赤にした。
名前を覚えていてくれたことが…嬉しかったんだね。
「ロシュさん…ですよね?その恰好は…?」
レイル姫の言葉に我に返ったのか、ロシュは慌ててウィッグをはずした。


