「…レイル姫の、声だ」
ロシュが、かすれた声でそう言った。
「…あの部屋だ。行こう」
ゼンは私とロシュを見てそう言うと、静かに歩き出した。
私はこくりと頷くと、ロシュの手を引く。
「…行こ、ロシュ。もうすぐ逢えるよ」
緊張が、握った手のひらから伝わってくる。
ロシュは唇をきゅっと結び、力強く頷いた。
レイル姫の部屋の扉は、他の部屋の扉より豪華で、すぐにわかった。
ゼンはその扉を見据えると、何かを決意したかのように、私を見た。
「…え、何?」
何故だか嫌な予感がして、身構える私に、ゼンが耳打ちした。
その言葉に、私は目を見張ったし、近くで聞いていたロシュも驚いていた。
「…ゼン、そんなこと…」
「仕方ないだろ。それしかない」
ため息をつくゼンを見て、困惑の表情を浮かべるロシュを見て…私は躊躇った。
下手したら、私たちは捕まると思う。


