でも今は、その警備の薄さが好都合で。
私たちは辺りをこまめに確認しながら、少しずつ足を進めた。
「…レイル姫のお部屋って、この奥なの?」
私は後ろを振り返ると、ロシュに訊ねた。
「…多分。窓の外の景色から見て、この近くだと思うんだけど」
自信なさげにそう答えたロシュに、
「…全部捜せばいいことだろ」
なんてゼンが言うから、私は思わず笑みをこぼした。
ゼンも、ロシュをレイル姫に逢わせてあげたい、って考えてくれてるのかな?
「レイル姫様、お茶をお持ちいたしました」
廊下に響いたその声に、私たちは足を止めた。
レイル姫って…言った?
「…静かに。俺が確かめる」
ゼンが小さくそう言い、廊下の角から声がした方を覗いた。
「…ありがとう。でも、今はいいわ」
「わかりました。では、また後ほど。失礼致します」
閉まる扉の音に、遠ざかる足音。


