「はー…。あんたに比べて、ゼンは全く心配ないわね」


ニーナの視線の先を追って、私もゼンを見た。


ゼンは、レキより早く準備を済ませ、窓辺に腰かけていた。



黒髪のサラサラなストレートヘアのウィッグ。


細身な体に合う可愛い服。


…完璧な女の子。



つと、こっちを見たゼンと視線がぶつかり、どきんと心臓が跳ねる。


女の子だよって紹介されたら、疑いもしないと思うくらい似合ってる。


「もうゼンだけでいーじゃん!! マジ俺泣きそう」


何だかんだ喚いてるレキだけど、レキも充分可愛いと思う。


他のみんなは、珍しいものを見る目つきで、ゼンとレキを交互に見ていた。


「…さて」


カタンと小さな音を立てて、ゼンが椅子から立ち上がった。


「行くか」


すると、ニーナの怒声が飛んだ。


「ゼン!ティナに入ったら、言葉遣い気をつけてよ!」


「…大丈夫。喋んないから」